ストーマ装具からのガス抜き方法
![空に浮かぶ風船](/files/news/1new_sawayaka/care/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC/25298488_s.jpg)
1965年、国産初の粘着式ストーマ装具が発売されました。それから50年以上経った現在、数多くの製品が開発され、それに伴い性能も飛躍的に向上しました。
その中でも、特に発展した性能のひとつがガス抜きフィルターです。ガス抜きフィルターがない場合、放っておくと袋はガスでパンパンに膨らんでしまいます。
また、昨今のガス抜きフィルターは、ただガスを抜くだけでなく、脱臭機能も優れているため、多くのオストメイトの生活を陰ながら支えてくれています。
まさしく、なくてはならない機能となったガス抜きフィルターですが、まれに「フィルターが機能しなく、ガスで袋がパンパンになってしまった」といった声をいただく事もあります。
そこでこの記事では、各社のガス抜きフィルターの比較と、目詰まりなどで機能しなくなってしまった場合などの対応策をご紹介させていただきます。
1.ガスが発生する原因
ガス抜きフィルターについてご紹介させていただく前に、まずはガスが発生する原因についてお話いたします。
ガスの発生自体は生理現象なので完全になくすことはできませんが、発生の頻度を少なくする予防はできます。
ガスの多くは、飲み込んだ空気が原因とされています。そのため、会話をしながらの食事や早食いをすると、口から飲み込む空気が増えてガスが出やすくなります。
また、ビールなどの発砲飲料やラーメンなど、空気を飲み込みやすい食生活などもガスを作りやすいです。
予防策としては、口をつぐみながらゆっくりよく噛んで食べるなどの習慣をつけると良いとされています。また、ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取して、腸内環境を整えることも有効です。
ただし、前述した通りガスは生理現象ですので、あまり過敏にならず、出来る範囲で予防することをおすすめします。
2.各メーカーのガス抜きフィルター
現在、ほとんどのストーマ装具にガス抜きフィルターが備わっています。
特に新しく発売となる製品に関しては必ず搭載されているため、必須機能といっていいでしょう。
そんなガス抜きフィルターですが、製造メーカーによってその構造や性能がまるっきり違います。
ここでは、そんな各メーカーのガス抜きフィルターをまとめて紹介させていただきます。
コロプラスト
大型円形フィルター(センシュラミオ)
ガスはプレフィルターの下から上に向かって通過していきます。
大型円形フィルターが、活性炭フィルターとメンブレンを排泄物による目詰まりから守ってくれます。
他社装具と比較しても類を見ないフィルターの大きさで、ガス抜き性能が高いです。
アルケア
通期回復フィルター(セルケア、イレファイン)
ストーマ装具内の排泄物がフィルターを通って外に染み出さない構造になっています。
最大の特徴は、目詰まりを起こした際に、指で数回つまむことで通気性が回復する通期回復フィルターです。
この通期回復フィルターを搭載しているメーカーはアルケア社のみになります。(2023年1月時点)
ホリスター
AF300 オストミーフィルター(やわぴた、モデルマフレックス※FT除く、ニューイメージ※ドレイン除く)
活性炭を使用しているため、高い消臭効果があります。
水を通さない膜と、半透過性膜の組み合わせで空気以外を通しません。
最大の特徴は、防水であるという点です。水に強い特殊なフィルターにより、入浴時もフィルター用シールを貼る必要がありません。
ダンサック
ノバライフフィルター(ノバライフTRE、ノバライフ)
こちらも防水であることが最大の特徴です。
フィルターシールを使わずに入浴することが出来ます。
また、両面に撥水加工が施されているため、排泄物による内側からの水分の侵入も防ぎます。
コンバテック
消臭フィルター(やわらかシリーズ)
ガスを透過させ、液体を通さないメンブレンフィルターが、装具内のガス溜まりを軽減します。
ストーマ袋の中に仕切りのフィルムがあります。便を溜める空間とガスを溜める空間を分けることで、便汁からフィルターを保護する構造になっています。
3.ガス抜きフィルターのトラブル
ここまで、各社のストーマ装具のガス抜きフィルターを紹介してきました。
各社の工夫と企業努力により、性能の高い個性的なガス抜きフィルターが増えてきていますが、それでも100%ガス抜きの問題を解決できるわけではありません。
ここからは、実際によくあるトラブルの中で、ガス抜きフィルターが密接にかかわっている事例について紹介していきます。
バルーニング
バルーニングとは、ストーマ装具内にガスが溜まり、袋が膨らむ現象をいいます。
食事の内容やご自身の体調によってガスが多めに発生した場合、フィルターの機能が追いつかず、バルーニング現象が発生する場合があります。
バルーニングによって、袋自体が破れるということはございませんが、溜まったガスの圧力によって面板が剥がれてしまうことは大いに考えられます。
![バルーニングの様子](/files/news/1new_sawayaka/care/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC/IMG_0218.jpeg)
バルーニングの様子
最も一般的な対応方法は、ストーマ装具の排泄口からガスを抜く事です。ツーピース装具を使用している方の場合は、面板とストーマ袋の嵌合部からもガスを抜くことが出来ます。
ただし、その場合は防臭フィルターを経由しないため、トイレで行うことをおすすめします。
また、日常的にガスが溜まらない工夫をすることも出来ます。ガスで袋が膨らんできたなと感じた場合は、まずストーマ装具を手で軽く押してみてください。ガス抜きフィルターは、自然とガスが抜けていく作りになっておりますが、外部から力を加えることでその効果が促進されます。ただし無理やり圧力をかけると、お腹に負荷がかかり体調を悪くしてしまう恐れがありますので、行う際は優しい力で軽く押しましょう。
装具を押してもガスが抜けない場合は、ガス抜きフィルターが目詰まりを起こしている可能性があります。そうした場合は、ガス抜きに時間がかかるため、バルーニングの可能性が高まってしまいます。
ガス抜きフィルターの目詰まり
ガス抜きフィルター部分に排泄物が付着すると、目詰まりを起こす可能性があります。
ガス抜きフィルターはストーマ装具の上部に付けられているため、日中活動する上では排泄物が付着する可能性は低いです。
注意するべきは就寝時になります。就寝時はストーマ装具が横向きになるため、排泄物がフィルター部分に付着する可能性が高いです。
特に水様便が出る方の場合はその可能性が高まります。就寝時の対策はなかなか難しいですが、ひとつの方法として、凝固剤というアクセサリーがございます。凝固剤は、水に触れることでゲル化し水様便をゼリー状にしてくれる商品です。
凝固剤の詳細は以下の記事にて特集していますので、ご興味がございましたらご確認ください。
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また、ガス抜きフィルターが思うように機能しない場合は、ストーマ装具の排泄口からガスを抜きましょう。先ほどもお伝えした通り、その際はトイレで行うことをおすすめします。
パンケーキング
ここまで、バルーニングの減少について説明してきましたが、逆にガス抜きフィルターが機能しすぎてストーマ袋内の空気が抜けすぎてしまい、真空状態になるといった現象が起こることもあります。
このような現象のことをパンケーキングといいます。主にガスの発生が少ない人に発生する現象です。
パンケーキングが起こると、ストーマ袋の内側がくっつき、排泄物が袋の下まで落ちにくくなってしまいます。排泄口まで落ちてこないので、排泄がしにくくなることはもちろんですが、袋の上部に排泄物がとどまることで、面板からの漏れや皮膚トラブルにつながる可能性もあります。
こういった現象が見られる場合は、まずストーマ装具に付属しているフィルターシールを使用してみましょう。
本来、フィルターシールは入浴時などの防水目的で使用されますが、フィルターをシールで塞ぐことで、一時的にその機能を停止してくれます。ガスが抜けすぎて困ってしまう場合はお試しください。
また、消臭潤滑剤を使用すると、排泄物がストーマ袋の下部まで落ちやすくなります。詳細については以下の記事で紹介しておりますのでご参照ください。
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4.外付けフィルターの紹介
ご使用中のストーマ装具にガス抜きフィルターがない場合や、バルーニング現象に悩まされている場合には、外付けのフィルターを使用することも出来ます。
ただし、外付けのフィルターを使用する場合は、装具に穴をあけてご自身で貼っていただく必要があります。
そのため、排泄物がフィルターに触れると染み出てきてしまうため、軟便~水様便の方にはおすすめできません。その点を考慮していただいた上で、参考にしていただけますと幸いです。
5.まとめ
いかがでしたか?
ストーマ装具を使用する上で、ガスの問題は切っても切り離せません。
もちろん、昨今の発展によりガス抜きフィルターの性能は向上しておりますが、場合によってはご自身で工夫をしていただく必要もあります。
この記事でお伝えした方法が、みなさまのストーマライフに少しでもお役に立ちましたら幸いです。
また、冒頭でもお伝えした通りガスの発生は生理現象です。あまり過敏にならず、ご自身の体調に合わせた対策をしていただく事をおすすめさせていただきます。
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