2025.10.23
こんにちは!中島小百合と申します。2016年7月12日に腸管子宮内膜症で一時ストーマを造設しました。直腸膣瘻でストーマの閉鎖が難しくなり、一時ストーマのまま10年が経ちました。
仕事は英語発音講師、通訳/翻訳、オストメイト啓発活動の3つです。好きな食べ物はいちじくと牡蠣と落花生とロブスターで、SNSは食べ物と一緒の写真が多いです。
このたび「こころのふれあいひろば」でコラムを書く機会をいただき、英語屋でオストメイトの私が皆さんのお役に立てることは何だろうと考えました。そこで思いついたのが、コラムをお読みの皆さんを旅行にお連れする気持ちで、海外の明るく楽しくユニークなオストメイト界隈の事情をお届けすることです。
海外旅行といえば飛行機!ということで、オストメイト的にはちょっと緊張の走る場所「飛行機」と「空港」についてお話します。
※このコラムでご紹介することはすべて、いち患者としての個人的な見解とアイディアです。療養中に旅をする際には医師・看護師さんに相談し、必要な書類があれば事前に手配し、無理のない旅行計画を立てましょう。
飛行機には乗り慣れているつもりでしたが、術後初めてのフライトは緊張しました。いつもと違う環境では腸の動きも予測不能だし、旅行先の食事は食材もタイミングも量も変則的だし…と、いろいろ考えてしまうのはもう、仕方がないのでしょうね。
「オストメイト」「旅行」「ポイント」などのキーワードで検索すると、良い記事がたくさん出てきます。
(※ザイタック通信の記事「オストメイトの外出・旅行時の持ち物とポイント」は、お散歩から少しずつ外出や旅行に慣れていきましょう、というアプローチのとても良い記事です。ぜひご一読を!)
一般論はそちらでお読みいただくとして、個人的に気を付けているのは搭乗1~2日前の食事でしょうか。
旅の後半は現地にも慣れてきて、特に最終日はいろいろチャレンジしたくなりますが…私の場合は最終日にはしゃぎすぎると、帰りの機内で腸が不規則行動を起こすようです。最近は帰りの便の36時間前ぐらいから、いつもよりよく噛んでおこう、知らない食べ物は避けよう、と無意識のうちに行動を修正しているようで、機内で急にストーマが自己主張を始める、というアクシデントは減りました。
もうひとつ、空港でドキドキするのは保安検査場!
特に海外旅行では、トランジットや入出国時でボディチェックを受けたらどうしよう、「服の下でシャカシャカ言ってる音は何だ」と知らない言葉で聞かれたらなんて答えよう、など不安な方も居られるかもしれません。
国によっては金属探知機ではなくボディスキャナーを通る場合がある(=袋が映る)ので、私は先に「おなかに袋ついてるよー (I have an ostomy bag on my tummy.)」と保安官に伝えます。
なぜ「私はオストメイトです」と言わないかというと、保安検査官に「オストメイト」や「ストーマ」と英語で言っても反応が薄い(たぶん知らない)からです。どこの国に行く場合でも、空港のスタッフ全員が私たちのことを知ってくれているわけではない、という気持ちでいたほうがトラブルが少ない気がします。
「じゃあ私はどうしたら良いの」というお声にお応えして、こんな手紙を書いてみました。
この書類は空港の保安検査場でおなかの袋について何か言われそうになったとき、検査官の方に読んでいただくために書いた英文です。
英語ができるだけの当事者(私)が書いたタダの手紙ですので、もちろん法律的な拘束力はありません。もちろん診断書でもありません。
ただ「オストメイトが空港で困った時、パッと渡して相手にざっくり事情をつかんでもらう」ためのツールとしてお使いいただけたら、と思い、心をこめて書いた手紙です。
(和訳はこちら)
下には当事者の方のお名前や連絡先を書く欄を作りました。
記入例も作りましたので、日付や住所や電話番号の書式など、参考になさってください。
こんな手紙を持ち歩かなくても、保安検査場なんて笑顔で通っていただけるはず!です。とはいえ、不安だと最初の一歩が踏み出せない…という方がおられたら、海外旅行のQOLを上げるお守りとしてお持ちください。
なにしろ世界には、楽しいことが、たくさんあるので!
今回は自己紹介がてら、英語屋オストメイトとして皆さんのお役に立てそうなアイディアを提案してみました。
次回からは実際に、海外のオストメイト事情についてお喋りしていきたいと思います。


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英語発音講師、音楽通訳・翻訳
オストメイト当事者
学習院大学文学部哲学科(東洋思想史専攻)卒業。
英語力ゼロで渡米。3年半でTOEIC満点、英検1級合格の英語力を習得。
米国バークリー音楽大学
Berklee College of Music
パフォーマンス(歌)学部卒業。
23歳から英語学習を始めネイティブ発音を習得。
音大で学んだ経験を活かした独自の発音指導方法を開発。
企業研修、個人指導などで英語発音の指導をおこなう。
通訳・翻訳業では、音大教科書の翻訳、音大教授のマスタークラス通訳、楽譜出版社の講義通訳、Zoomレッスンの同時字幕通訳、雑誌のインタビュー通訳などを担当。
結婚直後に腸管子宮内膜症で一時ストーマを造設。そのまま現在に至る。
「しあわせなオストメイトから明るくやさしい社会をつくる」を目標に全国で啓発活動を行う。