2023.04.03
突然ですが、この記事を読んでいるあなたは、音楽療法という言葉を聞いたことがありますか?
突然の質問で申し訳ありません。ご挨拶が遅れましたが、私は、日本音楽療法学会認定音楽療法士の柳川円(やながわまどか)と申します。日頃、音楽療法士としてネットを中心に発信活動をしています。
日本でも徐々に音楽療法という言葉が広まりつつありますが、具体的にどんなことをする人なのかという問いに対して、すぐに答えられる人はまだまだ少ないように感じます。
そこで、今回は音楽療法というものが一体なんなのか。音楽療法士とは一体どんなことをする人なのかについてお話をしていきます。
音楽療法というと【療法】の言葉を見て、なんだか「音楽で人を癒す人」と思った方が多いかもしれません。
ですが、単純に音楽療法士=音楽で人を癒す人というわけではありません。
音楽療法が成り立つには、3つの関係があります。
まず一つに、音楽。そして、音楽療法をする音楽療法士。最後に、音楽療法を必要とする対象者(音楽療法ではクライアントと呼ぶことも)。
この3つの関係が成り立って、初めて音楽療法が成り立つのです。
話を戻して、時折疲れた時などに癒しの音楽を聴くことが音楽療法だと思われることがあるのですが、一個人が癒しの音楽を聴いて癒されるというケースを、先ほど挙げた関係性でみてみましょう。
癒しの音楽を聴くというのは、音楽と音楽を必要としている人の2つの関係となり、音楽療法の成り立ちに必要な3つの関係が揃いません。ですから、癒しの音楽を聴くということ=音楽療法とはならないのです。
音楽のチカラを意図的に用いることで、行動の変容などを目指す。
では、音楽療法とは一体なんなのか。音楽療法士とは、一体どんなことをする人なのか。
日本音楽療法学会によると、音楽療法は「音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きを用いて心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、問題となる行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」(日本音楽療法学会より)と定義されています。
これを読んで「なるほど」と思われる方がいるかもしれませんが、反対に「ますますわからなくなった」と感じた方もいるはず。
私もこの定義を最初に読んだ時に、頭の中が「?」となった人間なのですが、そんな方のために、この定義の中にある【音楽を意図的、計画的に使用すること】という部分の解説と、音楽のチカラについて少し考えていきたいと思います。
音楽には様々な効果があります。
例えば、【♪幸せなら手を叩こう】という歌がありますが、あの歌の中で手を叩くタイミングというは、音がない、いわゆる空白部分で手を叩きます。
では、なぜ私たちはあの歌の中の空白部分で手を叩くのでしょうか?
それは、人間は音楽の空白を埋めたくなるという感覚が働くからです。
また、閉店間際のお店ではよく【♪蛍の光】が流れますが、あの曲を聴くと「もうそろそろ閉店なのか」「急いで買い物をして帰らないと」という気持ちになりませんか?これも音楽の持つ働きの一つと言えます。
このような、様々な音楽のチカラを意図的に用いることで、心身の障がいのある方などの回復、機能の維持改善、生活の質の向上、問題となる行動の変容などを目指すというものを、音楽療法というのです。
では、具体的にどのような障がいのある方に対して、どのような音楽を用いることで行動の変容等を目指していくのか、気になるという方もいらっしゃるかもしれません。
具体的な音楽療法の活動内容は次回の記事でご紹介したいと思いますので、次回の記事をお楽しみに…‼
日本音楽療法学会認定音楽療法士
北海道生まれ
日本音楽療法学会認定音楽療法士取得(2017年)
某音楽大学電子オルガン専攻卒。
卒業後、会社員を経てその後フリーランスの音楽療法士へ。
専門は児童、高齢者領域の音楽療法。
「広大な大地が広がる北海道出身の音楽療法士、柳川円です。広大な大地のような、広い心を持ちたいといつも思っています。ですが実際の私はすぐにイライラする人間なので、理想とギャップを感じたいという方は、ぜひ会いにきてください(笑)」