2023.10.16
前回のコラムでは、弾性ストッキングの生地(丸編み/平編み)の特徴ついてご紹介しました。
今回は、弾性ストッキングの「既製品」と「特注製品」についてご紹介します。
簡単にいうと、「既製品」は完成した状態で販売されている弾性ストッキング、「特注製品」は体形に合わせて一から採寸して製造する弾性着衣です。
これまで国内外において、約10社の弾性着衣製造工場の見学をさせていただきました。各メーカーには長年培われた技術と経験の積み重ねがあり、その成果が製品の特徴として反映されています。
●既製品について
「既製品」は、何十万人というデータを基に設計されていて、各メーカーの製品サイズ表を指標に選ぶことができます。
数か所の採寸点、足の長さ(丈)や周径の採寸値を元に選定できるため、比較的求めている製品を探しやすいです。
≪丸編みの既製品≫
・薄手の生地、しなやか、伸びが大きい
・XS、S、M、L、LLなどニーズに応じたサイズ展開
・パンティストッキング型、片脚ストッキング型、ハイソックス型、トウキャップなどの形状がある
・脚の長さによって、ショート丈、ノーマル丈、ロング丈などが選べる
・パンティ部分と左右下肢は同じ圧クラス
・足先は「つま先あり」か「つま先なし」が選べる ※メーカーに要確認
・おもに静脈性浮腫や軽度のリンパ浮腫に対して
≪平編みの既製品≫
・しっかりとした厚手の生地、伸びが小さい
・S、M、Lなどのサイズ展開
・取り扱いメーカーが限られていて、製品の種類やサイズ展開が少ない
・「パンティストッキング」や「片脚ストッキング」がある
・パンティ部分と左右下肢は、基本同じ圧クラス
・おもに中等度以上のリンパ浮腫に対して
●特注製品について
「特注製品」は、訓練を受けた計測者が、左右の脚やお腹周りなど体形に合わせて約40か所の採寸点を測り、お使いになる方専用の弾性ストッキングに仕上げていきます。
工場の製造においては手縫い部分の工程も多く、熟練の技術が必要になります。
患者さんの症状に合う弾性ストッキングを作るために、多くの経験の積み重ねが必要になりますが、既製品では対応の難しい各部での細やかな要望にも応えることができます。
≪丸編みの特注製品≫
・薄手の生地、しなやか、伸びが大きい
・パンティストッキング型、片脚ストッキング型、ハイソックス型などの形状に対応
・パンティ部分と左右下肢は、基本同じ圧クラス
・足先は「つま先あり」か「つま先なし」を選べる
≪平編みの特注製品≫
・しっかりとした厚手の生地、伸びが小さい
・パンティストッキング型、片脚ストッキング型、ハイソックス型、トウキャップなどの形状が選べる
・パンティ部分と右下肢、左下肢のパーツ毎に希望の圧を指定できる
・豊富なオプションを付加できる
・足先は「つま先あり」か「つま先なし」が選べる
・「つま先なし」の場合、足先の形状を「直線ライン」か「斜めライン」を選べる
豊富なオプション:参考① お腹周りのオプション
JUZOエキスパート(特注平編み弾性ストッキング)
お腹周りの形状のニーズに合わせて、様々なオプションを選ぶことができる
豊富なオプション:参考② 足のつま先のオプション
JUZOエキスパート(特注平編み弾性ストッキング)
足のつま先の形状のニーズに合わせて、様々なオプションを選ぶことができる
既製品はサイズもバリエーションも豊富ですが、多くは海外で製造されています。
このため、しっくりくるという製品が見つかるまでに、何種類か経験されることもあります。
特注製品は既製品よりやや高価ではありますが、その方のニーズにより寄り添うことができる製品です。
伸縮性の生地を用いて、毎日変化するむくみに対応する製品を手作りするような形になりますので、新調するときに微調整を加えながら、よりしっくりくる製品に整えていきます。
わが国では2008年に診療報酬において「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給」が正式に認められるようになりました。
リンパ浮腫の場合には、半年に1度、洗い替えを含めて「2着」まで申請ができるようになりました。
慢性静脈疾患による浮腫の場合には、診断後1度のみですが保険申請することができます。
このような保険収載のしくみもご活用いただきながら、既製品と特注製品の弾性ストッキングをお使いいただけるように願っています。
次回は、『既製品と特注品の特徴と選び方』についてご紹介したいと思います。
リンパ浮腫療法士
20代前半にドイツ留学し、リンパ静脈疾患専門病院「Földiklinik(フェルディクリニック)」および「Földishule(フェルディ学校)」においてリンパ浮腫治療と専門教育の研鑽を積み、日本人初のフェルディ式「複合的理学療法」認定教師資格を取得。日々のリンパ浮腫治療を中心に、医療製品の研究開発、リンパ浮腫治療の普及活動、医療職セラピストおよび指導者の育成、医療機関や看護協会等の教育機関における技術指導、技術支援などに取り組む。
〈略歴〉
フェルディ式複合的理学療法 セラピスト資格取得(1998年)
フェルディ式複合的理学療法 認定教師資格取得(2000年)
ドイツ連邦共和国 医療マッサージ師 国家資格取得(2010年)
リンパ浮腫療法士資格認定(2013年)
NPO法人日本医療リンパドレナージ協会 副理事長(2014年)
国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会理事(2022年)