2023.09.19
心地よい暮らしをサポートする快適な弾性ストッキングに出逢うための第一歩は、弾性ストッキングの性質や特徴をよく知ることです。
弾性ストッキングの生地の編み方には「丸編み」と「平編み」があります。それぞれの編み方には独自の特徴があり、むくみの原因や症状に合わせて適切に使い分けをしていきます。
●生地の編み方による製品の特徴について
≪丸編み弾性ストッキングについて≫
丸編み弾性ストッキングは、市販のストッキングのような外観で、筒状の構造をしています。環状の縫い針が配置された丸編み機で製造されます。
◎特徴
◎長所
◎留意点
(※1)【出典】加藤逸夫監修,松尾汎編(2003)『リンパ浮腫診療の実際:現状と展望』(文光堂)
≪平編み弾性ストッキングについて≫
平編みの弾性ストッキングは、横編み機でセーターの袖のように平らに編まれた後、生地の両端を縫い合わせて筒状になるように製造されています。
◎特徴
◎長所
◎留意点
(※2)【出典】加藤逸夫監修,松尾汎編(2003)『リンパ浮腫診療の実際:現状と展望』(文光堂)
●どんな時に、どちらの編み方の製品を選ぶといいの?
「丸編み」は、生地が柔らかく伸びやすいため、静脈性浮腫やリンパ浮腫(軽度~中等度)、一般的なむくみなど、水分が動きやすいむくみに適しています。
静脈性浮腫では、おもにハイソックス型の弾性ストッキングが推奨されます。軽度のリンパ浮腫では、パンティストッキング型や片脚ストッキングが中心になります。
「平編み」は、生地がしっかりとしていて伸びにくいため、リンパ浮腫(中等度~重度)や脂肪浮腫などに適しています。
中等度~重度のリンパ浮腫では、水分の貯留、線維化などによる皮膚の厚み、関節部のくびれなどがみられることがあるため、平編み生地のパンティストッキングにより患肢全体をしっかり包み込んで圧迫することで、症状の改善が期待できます。
●季節によって、着用感は違う? 洗濯の頻度は?
【夏には】
柔らかくて透明度の高い「丸編み」は、夏には涼しい印象がありますが、緻密な構造ゆえに蒸れやすさを感じやすい方も多いのではないでしょうか。
実は、意外にも厚地の「平編み」の方が通気性も高く、風が通りやすいという特長があります。
このように生地を伸ばしてみてみますと、緻密な丸編みに比べ、平編みは格子状に生地の編み目が広がり、風が通りやすい様子が一目瞭然ですね。
丸編みの構造
平編みの構造
とはいえ、近年の亜熱帯並みの暑さには苦労しますので、あらかじめ部屋を涼しくしておいて着脱されることをおすすめします。
弾性ストッキングの上から冷感スプレーなどをお使いになる方もいます。
風が通るたびにメンソールの涼しさを体感でき、熱中症対策にもなります。
着用時に付着した汗や皮脂が生地の劣化に影響するため、夏には下着と同じように毎日洗濯をされることおすすめします。
【冬には】
弾性ストッキングを冬に着用しますと、温かいタイツのように感じられます。
発汗の少ない冬の時期には、ご自分のペースで判断されて洗濯をされると良いと思います。
《弾性ストッキングの洗い方》
弾性ストッキングは基本的に、手洗いか洗濯機で洗います。手洗いの場合には、ぬるま湯に中性洗剤を溶かして、優しく押し洗いします。
洗い終えたら、丁寧に優しくすすぎ洗いをして、タオルに包んでしっかりと水分を吸収させます。洗濯機を使用される場合には、傷をつけないように折りたたんで洗濯ネットに入れましょう。
洗剤は中性洗剤を使いましょう。塩素系の洗剤や、柔軟剤、漂白剤は、生地を劣化させる原因になります。
脱水が終ったら、シワを伸ばして陰干しをします。
次回は、『既製品と特注品の特徴と選び方(仮)』についてご紹介したいと思います。
リンパ浮腫療法士
20代前半にドイツ留学し、リンパ静脈疾患専門病院「Földiklinik(フェルディクリニック)」および「Földishule(フェルディ学校)」においてリンパ浮腫治療と専門教育の研鑽を積み、日本人初のフェルディ式「複合的理学療法」認定教師資格を取得。日々のリンパ浮腫治療を中心に、医療製品の研究開発、リンパ浮腫治療の普及活動、医療職セラピストおよび指導者の育成、医療機関や看護協会等の教育機関における技術指導、技術支援などに取り組む。
〈略歴〉
フェルディ式複合的理学療法 セラピスト資格取得(1998年)
フェルディ式複合的理学療法 認定教師資格取得(2000年)
ドイツ連邦共和国 医療マッサージ師 国家資格取得(2010年)
リンパ浮腫療法士資格認定(2013年)
NPO法人日本医療リンパドレナージ協会 副理事長(2014年)
国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会理事(2022年)