2023.07.24
生まれたばかりの赤ちゃんの足は、ちいさくて可愛らしいですね。幼児期の歩き始めの頃から足は徐々にしっかりとしてきて、6歳頃までに約8割が完成すると言われています。思春期から成人へと成長するなかで筋力やバランス能力などが発達し、さらに年齢を重ねて成熟するほどにゆっくりと低下していく傾向にあります。
わたしたちの足や足裏は、身体の土台となり日々の暮らしを支えてくれていますが、なかなかじっくり触れて、観察してみる機会は意外と少ないのではないでしょうか。
足の機能には、大きく次の3つの働きがあります。
身体の支柱となり体重を支える
足には、なんと片足だけでも28個、両足合わせると56個の骨があり、これは全身に存在する骨の数(206個)の4分の1に相当します。さらに下半身には全身の7割の筋肉や靭帯が備わり、足は身体の支柱として体重を支えています。
足裏のアーチ構造で衝撃を吸収する
足には、歩くときに足裏のクッション(バネ)の役割をするアーチ構造があります。
このアーチ構造は、親指の付け根、小指の付け根、かかとの真ん中の3点を結ぶ『横アーチ(足の幅方向)』、『内側アーチ(土踏まず)』、『外側アーチ(足の外側)』、を形成しています。このアーチ構造によって、段差や急な斜面、でこぼこで道や砂場のような不安定な地面でも、足は地面からの衝撃を瞬時に吸収して、歩く、走る、立ち上がる、跳ねるなどの、日常活動の複雑な身体の動きを実現してくれています。
筋ポンプで血液を心臓に送り返す
足は「第2の心臓」ともよばれ、足の筋肉は、心臓から足まで運ばれてきた血液を、ふたたび心臓へと送り戻す仕事をしています。
足の様々な動きのなかでも、おもに足の関節の運動、すなわち、「つま先を上げる動き(背屈)」と、「つま先を下げる動き(底屈)」という動きによって、膝下のふくらはぎの筋肉の弛緩(ゆるむ)と収縮(ちぢむ)が繰り返されて、血液のポンプ作用が生み出されています。
このように大切な機能を担っている足ですが、これらの機能が低下すると、身体に様々な症状を生じることがあります。足の悩みの大半を占めるといわれる「外反母趾」「偏平足」「足底腱膜炎」「モートン病(神経圧迫)」などはアーチ構造のゆがみが引き金になります。
また重力の影響を受けやすい膝下では、筋肉ポンプの動きが少なくなると、血液が下半身の静脈にとどまり、疲れや冷え、むくみなどの症状を感じやすくなります。
このようなことから、足は『病気の窓』ともいわれ、足をよく観察すると病気の初期サインが見つかることがあります。
人の体重の約6割は水分で構成されていますので、とくに病気や異常がなくとも、長時間の同じ姿勢、睡眠不足、運動不足、塩分や水分の摂り過ぎ、女性の月経時などでも、足がむくむことは日常的によく経験することです。
安静に過ごすことですぐに改善するむくみでしたら心配のいらない場合がほとんどですが、いつまでもむくみが解消されない、痛みや熱がある、他の身体症状があるなどの場合には、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
次のチェックポイントを目安に、足を観察してみましょう。
とくに、足の「むくみ」の原因となる病気には、「内臓(心臓・腎臓・肝臓など)の病気」によるもの、「内分泌(甲状腺など)の病気」によるもの、「静脈やリンパの流れの滞り」などによるものがあります。
両側の足にむくみがみられる場合には、心臓、腎臓、肝臓、甲状腺の機能低下などが考えられます。
片足だけにむくみがみられる場合には、静脈血栓症やリンパ浮腫、皮膚炎、関節炎などが考えられます。(※おもな診療科は、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、内科になります)
今日はぜひゆっくりと、ご自分の足に触れて、慈しみながら、じっくりと観察してみましょう。
わたしたちの暮らしを支える縁の下の力持ちの“足さん”が、何だかとても愛おしく感じられることと思います。
次回は、足のむくみを中心とした「圧迫製品の特徴と使いわけ」についてご紹介したいと思います。
リンパ浮腫療法士
20代前半にドイツ留学し、リンパ静脈疾患専門病院「Földiklinik(フェルディクリニック)」および「Földishule(フェルディ学校)」においてリンパ浮腫治療と専門教育の研鑽を積み、日本人初のフェルディ式「複合的理学療法」認定教師資格を取得。日々のリンパ浮腫治療を中心に、医療製品の研究開発、リンパ浮腫治療の普及活動、医療職セラピストおよび指導者の育成、医療機関や看護協会等の教育機関における技術指導、技術支援などに取り組む。
〈略歴〉
フェルディ式複合的理学療法 セラピスト資格取得(1998年)
フェルディ式複合的理学療法 認定教師資格取得(2000年)
ドイツ連邦共和国 医療マッサージ師 国家資格取得(2010年)
リンパ浮腫療法士資格認定(2013年)
NPO法人日本医療リンパドレナージ協会 副理事長(2014年)
国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会理事(2022年)