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高齢者の音楽療法プログラム

2023.05.01

みなさん、こんにちは。日本音楽療法学会認定音楽療法士の柳川円(やながわまどか)と申します。

これまで2回にわたって音楽療法についてや、音楽の持つチカラや効果などをお伝えして参りましたが、今回はもっと具体的に、実際に音楽療法を行う場合のプログラムについてお話をしていきます。

まず、音楽療法の実践方法には、個別音楽療法と集団音楽療法の二つの形態があります。個別音楽療法は、対象者(クライアントともいいます)が一名の音楽療法をいい、集団音楽療法は、対象者が複数名の音楽療法をいいます。

今回は、日本で一番行われているのであろう高齢者を対象とした集団音楽療法を例に、どのようなプログラムが行われるのかお話ししていきます。

プログラムを立てる前に、最初に目標・目的を立てます。

なぜなら音楽療法は目標・目的を持って音楽を意図的に使用していく活動だからです。今回は、見当識の向上、認知症予防、美的体験を目標・目的としたプログラムを立ててみます。

見当識というのは、自分が今どこにいるかということや、今現在の日付や季節などを把握することをいいます。

高齢者を対象とした音楽療法を行う際、認知症の方が参加される場合がありますが、認知症の方の中には見当識障害のある方もおり、音楽療法の中でも見当識の向上を活動目的に取り入れることがよくあります。

例えば、4月は春の季節です。そんな季節を感じられるように、【♪春の小川】【♪春が来た】など、春らしい季節が感じられる歌を歌います。

春にまつわる歌は歌謡曲でもたくさんありますが、活動開始したばかりの序盤では、いきなり難しい歌を歌うより、多くの人が歌詞をみなくても歌える童謡や唱歌を用意すると、音楽活動の参加のハードルを下げることができます。また、そのような空気感は、居心地の良い空気感作りにつながると感じます。

ご自宅で歌いながら体を動かすなどの活動をされてみるのもおすすめです。

そして、季節の歌を歌った後は、歌にまつわる話題提供をし、回想法につなげます。

回想法とは、昔懐かしの曲や写真を見たり聴いたりすることで、昔の思い出や過去の経験を思い出したり話し合うことをいいます。回想法には、心を落ち着かせることや認知症予防の効果があるといわれており、音楽療法活動では、音楽にまつわる話題提供をすることで、回想法につなげる場合があります。

例えば、「みなさんの小さい頃、お住まいだった地域には小川がありましたか?」などの質問をすると、回想法につながるだけではなく、他の方と話すきっかけとなるような他者コミュニケーションへとつなげられます。また、歌にまつわるような写真、この場合は桜が咲いている小川や、たんぽぽやチューリップなどの春らしい写真をお見せすることで、視覚からも季節を感じ、より回想法につながりやすくなります。

季節の歌を歌うだけではなく、楽器活動も行います。

前回の記事で紹介した歌いながら楽器を鳴らすデュアルタスクは、脳の様々な部分を活性化させ、認知症予防に効果があるとされています。

歌いながら鈴を鳴らす、手を叩く、体を動かす…。

認知症予防の音楽療法では、対象者の方に合わせて歌いながら何かをする活動というのはとても多く行われます。また、これはご自宅でも気軽にできるので、ご自宅で歌いながら体を動かすなどの活動をされてみるのもおすすめです。

そして、対象者が能動的に参加するだけではなく、音楽療法士の演奏を聴く美的体験を目的とした受動的な音楽療法が行われることもあります。

音楽療法士は療法士としてだけではなく、音楽家としての顔も持っています。そのような音楽療法士の演奏を生で聴き、美的体験をしていただく鑑賞活動です。

以上が、見当識の向上、認知症予防、そして美的体験を目標・目的として考えたプログラムでしたが、いかがでしたでしょうか?

音楽療法のプログラムというと、ずっと音楽をしているようなイメージがあるかもしれませんが、写真を見せたり、話題提供をしたりということも大切なアプローチの一つなのです。

PROFILE
柳川円 さん

日本音楽療法学会認定音楽療法士

北海道生まれ
日本音楽療法学会認定音楽療法士取得(2017年)
某音楽大学電子オルガン専攻卒。
卒業後、会社員を経てその後フリーランスの音楽療法士へ。
専門は児童、高齢者領域の音楽療法。

「広大な大地が広がる北海道出身の音楽療法士、柳川円です。広大な大地のような、広い心を持ちたいといつも思っています。ですが実際の私はすぐにイライラする人間なので、理想とギャップを感じたいという方は、ぜひ会いにきてください(笑)」