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足のむくみ-「圧迫製品の特徴と使いわけ」

2023.08.21

足のむくみには、「一時的なむくみ」と「慢性的なむくみ」があります。
むくみの原因や症状によって、日常的なセルフケアで対応できる範囲なのか、医療機関での診療が必要になるのかが異なります。今の足の状態にどのような圧迫方法が適しているかということも、人ぞれぞれです。

●一時的なむくみ

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弾性ハイソックス
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藍染スポーツゲイター

「一時的なむくみ」は、日常的な運動やセルフケアで改善できます。

日中は、長時間同じ姿勢で立ち続けたり、座り続けたりするのをできるだけ避けて、ふくらはぎの筋ポンプ機能を活性化させる適度な運動を取り入れるようにします。

圧迫製品として、ふくらはぎを適度に圧迫し、血行を促進する効果のある弾性ハイソックスやランニング用ゲイターなどもおすすめできます。

●慢性的なむくみ

「慢性的なむくみ」では、医師の指導のもと「圧迫療法」が必要になることがあります。
「圧迫療法」は外側から脚や足を圧迫して、筋ポンプ機能をサポートして、静脈還流やリンパの流れを改善させる治療法です。

圧迫療法で用いられる代表的な圧迫用品には、「弾性着衣」や「弾性包帯」、「簡易的圧迫用品」などがあります。
これらの製品にはどのような特徴があり、どのように使い分けたらよいのでしょうか。

◆弾性着衣

弾性着衣とは、伸縮性の生地で筒状に編まれて製造された弾性ストッキング(脚用)のことです。
脚全体やふくらはぎ全体を伸縮性のある生地で包むように圧力をかけて、筋肉のポンプ機能を助ける働きをします。
基本的に日中用の構造で、夜間は外します。

≪弾性ストッキングの特徴≫

*多様な形状と種類
弾性ストッキングは、発症部位に合わせてさまざまな形状が製造されています。静脈疾患のための弾性ストッキングとして、ハイソックス型や片脚ストッキング型などが使用されています。
リンパ浮腫のための弾性ストッキングとして、パンティストッキング型、片脚パンティストッキング型、ベルト付き片脚パンティストッキング型などが使用されています。

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パンティストッキング
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片脚パンティストッキング
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腰ベルト付き
片脚ストッキング
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片脚ストッキング
7ハイソックス

出典:小川佳宏、佐藤佳代子著「浮腫疾患に対する圧迫療法」文光堂

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丸編み生地
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平編み生地

また、弾性着衣の生地の編み方には「丸編み」と「平編み」があります。

「丸編み」は静脈性浮腫やリンパ浮腫(軽度~中等度)、一般的なむくみに対して用いられます。

「平編み」はおもにリンパ浮腫(中等度~重度)に対して用いられます。どちらにも既製品と特注品があります。

*減圧構造
足先から脚のつけ根に向けて、段階的に圧が軽減していく「漸減圧構造」で設計されています。
足関節部にかかる圧迫力の強さを100%とすると、ふくらはぎで70%、膝で50%、太ももで40%ほどの着圧へと軽減していきます。

*圧迫クラスの指標
脚のむくみの症状や重症度に合わせて、必要な着圧の程度(圧迫クラス)を判断します。

  • 下肢静脈瘤や一般的なむくみの症状改善のため:20mmHg 未満が目安
  • 下肢静脈瘤やリンパ浮腫によるむくみの改善のため:20~30mmHgが目安
圧迫圧 病態
17mmHg未満 血栓症予防、静脈瘤予防、塞栓予防
低圧 18-21mmHg 軽度の静脈瘤、初期の妊娠中の静脈瘤
中圧 23~32mmHg 静脈瘤、外傷性浮腫、静脈血栓後遺症、下肢リンパ浮腫
強圧 34~46mmHg 高度浮腫、皮膚栄養障害のある静脈瘤、静脈血栓後遺症、下肢リンパ浮腫
最強圧 46mmHg以上 高度な下肢リンパ浮腫

参照:R.H,K,Strößenreuther著書より

それでは、弾性着衣以外の圧迫方法についても見ていきましょう。

◆弾性包帯

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ガーゼ包帯
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ショートストレッチ包帯
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ロング/ミドルストレッチ包帯

硬めで伸びにくい包帯、柔らかくて伸びやすい包帯、肌に優しいガーゼ素材の包帯など、様々な伸び率や幅の弾性包帯があります。これらを、その日の身体の状態や症状に応じて、伸長度合いや巻くときの重ね方を調節しながら巻きます。日中にも就寝時にも巻き続けることができます。

◆簡易的圧迫用品

弾性ストッキングよりもやや軽圧で心地のよい圧迫感があります。
ポリエステルやウレタン、綿など様々な素材で製造されます。筒状の製品が主流ですが、ベルクロ式(マジックで留めるタイプ)の製品もあります。日中にも就寝時にも装着できるタイプが大半です。

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弾性トウキャップ
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弾性筒状包帯
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ベルクロ式包帯
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右:エアボウエーブ
左:ソフィットVE
17G-Hogwove
(ジーホグウェーブ)

●圧迫製品を安全に使用するために

医療用の製品でなくとも、ドラッグストアなどで市販されている美容や健康増進を目的とした「むくみケア用」の商品をお使いになったことのある方もおられると思いますが、これらは一般的に就寝時にも使い続けることのできる軽度圧の商品が大半です。
医療用の場合には、実際に疾患がある方が対象になりますので、製品をお使いになる前に医師の診察を受けられてください。

圧迫療法を始める前の確認事項

このような症状がある場合には、圧迫は禁忌となります。ご使用前にはかならず医師に相談してください。

  • 心疾患によるむくみ(うっ血性心不全)
  • 動脈血行障害(ABI(足関節血圧/上腕血圧比)が0.7あるいは0.6未満の方)
  • 糖尿病(血流障害や神経症状がある方)
  • 皮膚の急性炎症(蜂窩織炎など)急性期の深部静脈血栓症

圧迫製品を使用中に確認してほしいこと

医療現場では、圧迫用品を使用されることで生じる創傷「医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)」が起きないように十分に配慮しています。ご自宅でも安全に使い続けられるように、下記の内容をチェックしてみてください。このような症状がみられたら、ご使用を一時休止して、医師に相談しましょう。

  • 圧が強すぎて辛くないか
  • 圧が緩すぎてむくみが増強していないか
  • シワ、めくれ、食い込みなどが生じていないか
  • 皮膚の赤み、皮膚炎、かぶれ、水疱、痛み、冷感などが生じていないか

圧迫療法には様々な方法がありますが、どの圧迫製品をお使いになられても、安全にかつより快適に効果が得られることが大切です。

次回は、「暮らしをサポートする快適な弾性ストッキング」についてご紹介したいと思います。

PROFILE
佐藤佳代子 さん

リンパ浮腫療法士

20代前半にドイツ留学し、リンパ静脈疾患専門病院「Földiklinik(フェルディクリニック)」および「Földishule(フェルディ学校)」においてリンパ浮腫治療と専門教育の研鑽を積み、日本人初のフェルディ式「複合的理学療法」認定教師資格を取得。日々のリンパ浮腫治療を中心に、医療製品の研究開発、リンパ浮腫治療の普及活動、医療職セラピストおよび指導者の育成、医療機関や看護協会等の教育機関における技術指導、技術支援などに取り組む。

〈略歴〉
フェルディ式複合的理学療法 セラピスト資格取得(1998年)
フェルディ式複合的理学療法 認定教師資格取得(2000年)
ドイツ連邦共和国 医療マッサージ師 国家資格取得(2010年)
リンパ浮腫療法士資格認定(2013年)
NPO法人日本医療リンパドレナージ協会 副理事長(2014年)
国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会理事(2022年)